Artist Interview

#02

尾形アツシ

 

奈良県宇陀市に工房を構える尾形さん。
電車で向かう道のり、途中で景色が山風景へと変わり雲が段々に下りてきて、自然豊かな土地に向かっていく。
最寄りの駅までお迎えに来てくださり、車で走るとすぐに標高が上がり、着いた先は水や風や虫の音が聞こえる場所。
いろいろな木々が茂り、伺った頃は丁度、金木犀が香っている時期でした。
そんな自然豊かな工房で、尾形アツシさんにじっくりとお話を伺いました。



―陶芸家として活動を始めたきっかけを教えてください。

尾形さん:
私は東京の生まれで、最初は会社員をやっていました。
作るという事に関して、沢山のクリエイターとの付き合いがあり、20代〜30代前半にかけてそこで勉強したことは、非常に焼き物を作ることに役立ちました。仕事の関わり方であるとか、取り組み方にすごく影響を受けました。
それがあったから、今の陶芸もあります。

その後、東京を離れて仕事をしたいと思い、何をやろうかな…と探している時に出会ったのが陶芸です。
東京でアメリカの現代陶芸家”ピーター・ヴォーコス”の展示会を見て、陶芸でもいわゆる民芸だけでなく作家性を持って仕事をされている人がいることにすごく刺激を受けました。こういう道もあるんだったらすごく面白いなという刺激を受けて、幅広い分野の陶芸に興味を引かれたのがきっかけです。

ー工房をこの場所に選ばれた理由を教えてください

尾形さん:
最初の1年間は愛知県の瀬戸市にある窯業訓練校に通い、その後2年間程瀬戸の窯元に勤めました。
働きながら少しずつ自分の仕事を始め、貸し工房からのスタートでした。
やがて自分の工房を構え、約10年間愛知で作陶しました。
ガス窯での仕事が中心でしたが、次第に薪窯での焼き物に興味が湧きました。
薪窯での仕事を始めるため、薪窯が作れて土地があり、家を建てられる場所を2年くらいかけて探しました。
焼き物はある程度場所がいる、なおかつ薪窯の場合は煙が出るので周りに民家が隣接していると苦情が来る心配もあるので、日本各地の陶芸家の知人やギャラリーを訪ね、ずいぶんと探しました。
そして、縁があって奈良に越すことになりました。

器のある暮らし:
それだけの時間と労力をかけて探されただけあって、とても自然豊かで気持ちの良い場所ですね。
何よりも、標高が上がり段々自然の中に入っていく感じがすごく素敵でした。


ー土本来の持ち味を生かし、力強く、表情豊かな作品を多く作られる尾形さん。
作品のインスピレーションとなるものはどのようなことですか。

尾形さん:
ここに来た理由も薪窯をやりたかったからです。
薪窯は土を原始的な方法で焼く方法。
それから進歩して灯油窯、ガス窯、という近代窯になって、均一に焼けるようになり、同じものを食器として多くの方に提供するのが、器としての目標とされてきたと思います。
そう言った、何でも均一の世界から見ると、それを乗り越えているように見えるのが薪窯。
薪窯で焼いたものは、人がコントロールをもちろんするんだけど、それプラスαの予想外な表情が出たりする。
それが薪窯の面白みであり、醍醐味だと思います。

土の持っている味わいや、素材の持ち味が一番面白く出た器が面白いし、惹かれるなと思うし、それを出したい。
私のやっている焼き物は素材の土に、粉引という化粧をかけるものがほとんどなのですが、元々食器として適していない土に白い化粧土をかけることで食器として使えるようにしたり、さらにその中で白い化粧を変えることでヒビの表情が出たり、本来ただの白い食器でしかなかったものが、もう一つテクスチャーとして面白いものに変わる。そこに非常に面白みと奥深さを感じたので、粉引の表現方法の器を作っています。
薪窯もその1つです。自分自身のコントロールを超えた、火と炎の焼き上がりが面白いと思うんです。

器のある暮らし:
「コントロールを超えたところが面白い」と話をしながら尾形さんは立ち上がり、焼き上がった器のところで丁寧に分かりやすくその面白いことを、いろいろと教えてくださいました。

尾形さん:
(いろいろ説明をしていただきながら…)
薪窯に近いのがガス窯で焼けている、これが今一番面白いです。
自分のやっていることだけど、その奥行きが面白いなと思ってやっています。

器のある暮らし:
ご自身で焼き上げて窯から出てきたものを見て、これ面白いなというものが毎回あるという感じですか?

尾形さん:
そうですね、それも狙いながら少しずつやっている感じです。
定番の物をきちんと焼き、新しいものを探していく感じです。飽きっぽいだけなんです。

器のある暮らし:
それは、常に新しいものを求めてチャレンジされているという事だと思います。

ー作品を制作するうえで、大切にしていることや心がけていることはどのようなことですか。

尾形さん:
ときめかないと面白くない。心が動くことが大切。
その中の食器と言う枠組みの中でどれだけ遊べるだろうか、という事を絶えず考えています。
食器の中に表現の欲が出過ぎているとうるさく、すごく限定的な器になってしまうと思う。
器としてのバランスが大事だと思います。
自然の素材、焼き方を中心に据えていくと、面白い器、奥行きのある器ができるんじゃないかと思って、今は作っています。

ー今後取り組んでいきたい新しいことはありますか?

尾形さん:
器の枠を広げたいと思っています。
使いやすいだけではない、面白いものをやってみたいという探求心は常に持っています。

ー徐々にアフターコロナが見え始めている昨今に対して「食べること」に直結する器、そんな今の暮らしの在り方やその中での器の意味について、どのように感じられていますか?

尾形さん:
私の器は端正で料理のキャンバスになるような器ではないです。
ですが、今回「器のある暮らし」さんの選んでいる器は、私の器の中でも取り扱いしやすい器です。
そこで、食卓の中に少しでも自然とか土の味わいみたいなものを、感じてもらえれば嬉しいです。

 

ー尾形アツシプロフィールー

1960年 東京生まれ
1996年 愛知県立窯業高等技術専門学校卒業
1998年 愛知県瀬戸市で陶芸家として独立
2007年 奈良県宇陀市に工房を移転
2009年 登窯と薪窯を使って作陶