
Artist Interview
#04
柳瀬和之
今回人生で初めて訪れた土地、福井県越前市。
「越前和紙」「越前打刃物」という国の伝統的工芸品を多く作り出すものづくりの街。
冬は雪深い地域ですが、伺った頃は新緑が青々とし晴れてとても気持ちよい日でした。
そんな自然豊かな土地で作陶をされている柳瀬和之さん。
物腰柔らかにそして丁寧に、陶芸への想いについて話してくださいました。



―ご両親が越前の国指定伝統的工芸品「越前和紙」の職人だったと伺っています。
和紙ではなく陶芸に進まれたきっかけを教えてください。
柳瀬さん:
はい、両親は紙漉き(和紙)の職人でした。
その両親からは継いでも継がなくても良い、自由にやって良いと言われていて、小さい頃から料理を作るのが好きだったんです。
なので高校2年生までは、調理師の専門学校にいくつもりでいて、料理人になろうと思っていました。
ですが、途中で大学に行きたくなり、大学に行きそのまま会社に就職しました。
就職した会社では、作り手と販売の間に立つ仕事で、納期や品質のクレーム、言ったことをやってくれないなどの板挟みの苦労があり、その経験からやっぱり自分で作る仕事がしたいという思いが芽生えました。
お料理が好きだった事から、料理を盛り付ける器に興味を持ち、焼き物を作りたいと思ったのがきっかけです。
その後、越前焼陶芸の先生に弟子入りをして基礎を学び、独立しました。
器のある暮らし:
お料理を作ることが好きだったんですね!
お料理はご両親の横で一緒に作るという感じで、作られたりしていたんでしょうか?
柳瀬さん:
いいえ、料理は両親の横でというより、自分で勝手に作っていました。
食べるのが好きで、スイーツづくりも大好きなんです。
そして、料理本を見るのも大好きなので専門的な分厚い料理本を読んだりしています。
器のある暮らし:
原点は「お料理が好き」という事。
だから、お料理をしっかりと受け止めてくれる安心感のある器作りへと繋がっているんですね。

※上写真)取材を受けた際、柳瀬さんご自身で作られたパウンドケーキと器で雑誌の紙面を飾ったそうです。
ーどんなお料理も受け止めてくれる安心感のある柳瀬さんの器。
器作りへの思いや、ルーツ、インスピレーションとなるものはどのようなことやものか教えてください。
柳瀬さん:
生活していると様々なところに、沢山のヒントがあり、いろいろな事に対して興味を持ち続けるのが大事かなと思います。
例えば、襖の手がかりを見て「ひっくり返したら素敵な器になりそう」とか、山の形、葉の綺麗な曲線を器に生かしたらどうだろうか…
全部が全部成功するわけではないのだけど、そんな風にいろいろなものを見て思っているとデザインが浮かんでくるんです。
また、様々な陶芸的技法も取り入れながら、自分なりにアレンジしていくようにしています。
器のある暮らし:
日常からのアイデアやインスピレーションだからなのか、器自体にとても自然を感じる事が多いように思います。
例えば、コーディネートに取り入れさせていただいた“曇天釉8寸浅鉢”。
この器の表情はまさに越前の冬の空の色を表現しているそうで、その独特な曇り空の表情が魅力的です。

ー器を制作するうえで、大切にしていることや心がけていることはどのようなことですか。
柳瀬さん:
使う方の事を思って、“使って良かった”と思ってもらえる器を作りたいという事を心掛けています。
自分の経験から、良いなと思って作家さんの器を買ったけど、使わずにどんどん棚の奥に行ってしまった事があります。
大事にしまうよりも頻繁に使ってもらい、使って良いねって言ってもらえる器を作りたいと思っています。
器のある暮らし:
今までコーディネートに取り入れさせていただいた器はまさにその使い方を想定していました!
タタラ長角皿は毎日の食卓に出る魚や肉料理に、そしておつまみを2〜3点ちょっとずつ盛り付けて。
24cmの浅鉢はシェア皿として2〜4人家族にぴったりなサイズで、揚げ物、煮物、炒め物なんでも受け止めてくれる器です。
どちらも頻繁に食卓で活躍して欲しいと思ってコーディネートに組み込ませていただきました。

ー柳瀬さんホームページで拝見した「陶芸とは自然に触れることであり、自然を感じるという事は、人生の生命を感じることのように思います」、この一文について真意をもう少し伺ってもよろしいでしょうか。
柳瀬さん:
焼き物の素材、燃料も自然の中のもの。
そして、動物植物の命をいただいて料理を作り、焼き物に盛り付けて食べる、というサイクルの中で生命って回っていると思うんです。
私は田舎に住んでいて山があり緑があり水が流れています。
例えば清流の岩肌に苔が蒸し、そこに水がかかった艶やかな岩肌表現をしたい。
自然に触れ、表現する、これが焼き物の1つではないかと思っています。
命のサイクルを見て、生命を感じることのように思います。

ーオーダーさせていただいた作風とはまた違った表情を持つ、焼き締めの器も作られる柳瀬さん。
焼き締めに込める思いをお聞かせください。
柳瀬さん:
実は抹茶茶碗が好きで、特に高麗茶碗が好きで作りたいという思いから、焼き締めを作っています。
越前の焼き締めは、無釉の焼き締めが伝統ですが、私は釉薬をかけて焼きます。
薪の灰がかかると面白い表情になるのが、何とも面白い。
越前で焼き物をしていますが、焼き上がったときに良いと思うものであれば良い。
伝統は今の時代や作る人の考え方を合わせて引き継いでいくことが、結果伝統になるのではないかと思っています。
今は越前陶芸村の穴窯を共同で使っていますが、ゆくゆくは個人で穴窯やりたいという思いです。
ー今後取り組んでいきたい新しいことはありますか?
柳瀬さん:
今は、独自のマットな釉薬の開発と、先ほど話した穴窯で「表現したい器」に取り組んでいきたいと思っています。
器のある暮らし:
どちらもお話を聞いてどんな器が生まれるのか、楽しみでなりません!


ー最後になりますが、これからの暮らしにおいて、器が生活にもたらすこととは何だと思いますか?
柳瀬さん:
美味しく食べるという事が楽しさに繋がる。
そんな役割を担う器を作り続けていきたいです。
様々な形や色の器が無くても良いはずなのに、それを求める日本人の感性や心の豊かさは引き続き繋がっていって欲しいと思います。
今の若い世代の方とは感覚が違うと思うのですが、いずれ年齢を重ねていくことで好んでいくと思う。
なので私たち上の世代が若い世代の方に向けて、魅力ある物を作って行っていけたらと思います。
自己満足ではなくもらったものを受け渡す、それが繋がるという事になると思っています。
インタビュー後、お昼ご飯に連れて行っていただいたのは、柳瀬さんお気に入りの越前蕎麦のお店。
歯ごたえのある硬い食感が特徴の蕎麦に、大根おろしと薬味、そしてそばつゆをかけて食べるのがオススメの食べ方。
喉越しよくとっても美味しいかったです、本当にありがとうございました。

ー柳瀬和之プロフィールー
1972年 福井県越前市生まれ
1996年 国士館大学経営学部 卒業
桝田屋 光生氏に師事する
2003年 越前市大滝町に陶房を構える
茶懐石の器を主に作陶する